秋田工業高等専門学校 電気情報工学科

坂本研究室(量子ビーム工学研究室)

研究内容


 主な研究対象は,荷電粒子を電磁場の作用を用いて人工的に高エネルギーに加速させる「加速器」です。これまで,企業や大学と共同で医療・産業応用を目指したテーブルトップ型のコンパクトな電子加速器の開発に携わってきました。「加速器」は電磁気学や電気・電子工学,半導体工学など様々な学問が融合した技術から成り立っています。加速器は工学のみならず,科学として非常に興味深く面白い分野です。多くの学生達と加速器研究の意義と面白さを知ってもらえるよう,研究活動を積極的に推進していこうと考えています。
 秋田高専では,上記の共同研究に加え,以下のような研究を学生達と実施しています。

自由電子レーザー光の光導波路を用いた高効率輸送の研究

 高エネルギー(ほぼ光の速さ)に加速された電子に加速度が作用すると,電磁波(光)が放射されます。この電磁波をシンクロトロン放射光と呼び,その光の波長は入射された電子の運動エネルギーに依存します。アンジュレーターと呼ばれる周期磁石中に電子を入射させると,磁場によるローレンツ力によって電子は蛇行します。この蛇行する際に電子には加速度が連続的に作用することになるので,シンクロトロン放射も連続的に発生することになります。この連続的に発生したシンクロトロン放射光は徐々に位相を揃えて時間的にコヒーレンスの高いレーザー光に成長していきます。これが自由電子レーザーの簡単(かなり大雑把ですが)な物理となります。
 坂本研究室では,自由電子レーザーやアンジュレーターを用いたコヒーレント光源の研究を,高エネルギー加速器研究機構(KEK),量子科学技術研究開発機構(QST),分子科学研究所電子蓄積リング(UVSOR)などと共同体制のもと研究を進めています。

小型高周波増幅器(クライストロン)を用いた高周波デバイステストベンチの立上げ

 電子加速器において電子を加速するために高周波(Radio Frequency; RF)を用います.このRFは数MW(メガワット)と大電力となることから,市販のシンセサイザー(発振器)から得られる高周波を増幅する必要があります.その増幅を担うのがクライストロンであり,坂本研究室では産業技術総合研究所(産総研,AIST),東京工業大学と共同研究を立上げ,秋田高専の実験室に出力5.5 MW, 周波数2856 MHzのクライストロンを設置しました.通常の加速器では,一度加速器が運転すると何日もの間クライストロンを止めることはありませんし,基本的に常時他の機器とクライストロンは接続した状態にあります.そのため,新しく設計・製作した高周波デバイスの大電力試験を行うことはできません.そこで秋田高専に設置したクライストロンは高周波機器のテスト専用装置として位置付けすることとし,自由度の高い新しい高周波デバイスの発展を推進することを目的としています.また,秋田県においては,仙台放射光施設の建設や国際リニアコライダー計画の推進など,中小企業による加速器産業界への参入が活発化していることから,秋田高専の高周波テストベンチを共同利用施設として利用してもらうことも計画しています.さらには,秋田高専の学生教育としても極めて高度な教材になり得ることから,高専卒業生の加速器業界への人材輩出にも役立てると期待しています.
 現在は,クライストロンに印加する大電力パルス電源の動作試験が終了し,今後クライストロンによる大電力RF出力試験を行う予定です.本システムを立ち上げるにあたり,非常に多くの方々,研究機関からご支援をいただいております.みなさまのご協力に感謝致します.

産総研陽電子生成用電子ライナックのアップグレード

 産総研に設置されている陽電子生成用電子ライナックのアップグレードに関する研究を行っています.

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